F. 大学生・成人以上


成長の樹 6 ~人類進化の方向性(より良く生きるために)~

より良き保育・子育て・教育を見出すためには、その教育法がどの様な人間を造りだすかを見極めることが必要です。同時に、人類の進化の方向性を探り、教育法と人類の進化が合致しているか確認しなくてはなりません。人類進化の方向性と教育法が合致していれば、その教育法は自然の摂理に沿ったものと言えましょう。 人類の進化は「前頭連合野」の発達によるもので、他の類人と比べ「前頭連合野」の大きさが5倍に発達しました。 進化論的な見方で人類の進化を見てきましょう。 人類はよりよく生きるために、二つの方向性の進化をしました。 ① 計画能力、問題解決能力の向上 ② 社会の一員として […]


3-3 大人のレジリエンスを高める方法 ~育児と発達心理~

3章 レジリエンス (特別コラム) 大人のレジリエンスを高める方法 ~育児と発達心理~ 子供のレジリエンスを高めるために一番大事なのは子供に精神的にもっとも大きい影響を及ぼしている養育者のレジリエンスを高めることです。養育者の言動を見て子供は自然とそれを真似るようになるからです。それでは、大人のレジリエンスを高める方法を3つ簡単に紹介したいと思います。 1.規則正しい運動でストレスを溜め込まないようにしましょう。 週に3回以上、一回30分以上の運動が効果的だと言われています。一度に過度な運動はむしろ害となります。ハーバード大学の精神科の医師であるジョンラ […]


3-2 レジリエンスを高める育児法 ~育児と発達心理~

3章 レジリエンス 2節 レジリエンスを高める育児法  ~育児と発達心理~ 「自分の失敗を笑い、そしてそこより学べ。自分の苦労を笑い草にしつつ、それから勇気をかきあつめよ。困難を笑い飛ばしながら、それに打ち勝て。」これは人気小説「赤毛のアン」に出て来る言葉です。赤毛のアンはレジリエンスの代表的な人物と言われています。彼女は孤児として不幸な子供時代を過ごして、恵まれていない状況にあったのにも関わらず、賢くて愛情あふれるきちんとした女性に育ちます。彼女は緑屋根の家に住んでいる心が温かい老夫婦の養子となることをきっかけに愛情あふれる環境、いい友達関係、近所との […]


3-1 レジリエンスとは? ~育児と発達心理~

3章 レジリエンス 1節 レジリエンスとは? ~育児と発達心理~ 「一人の子どもを育てるには、一つの村が必要である。(It takes a village to raise a child.)」これはアフリカのナイジェリアで言い伝われていることわざです。子供一人を育てるのに一つの村全体の大人達の知恵と協力が必要であるという意味です。日本では子供一人を育てるのに必要な教育費(幼稚園から大学まで)は780万円から3000万円と言われています。つまり、子供一人を育てるには社会全体の知恵や協力だけではなく、経済的にも相当な負担がかかるということです。大事な我が子 […]


セルフエスティームとレジリエンスへの影響 ~ 育児と発達心理学講座 ~

2章 愛着 3節 セルフエスティームとレジリエンスへの影響 育児と発達心理学講座 一覧 「成功とは失敗がない状態ではなく、困難や試練を克服した状態の事を言う」。筆者が最近読んでいる本の書き出しに書いてある言葉です。この本によると、偉人達は大変な困難や試練を乗り越えて、偉人になったのではなく、むしろ困難や試練にぶつかったため、偉人になったのだと記されています。つまり、困難や試練を経験した時、挫折し諦めるのではなく、自分の能力を信じ続け、努力を惜しまなかったとからさらに成長することができた結果、偉人と呼ばれるようになったわけです。もしかしたら、どんな状況でも […]


人格形成とセルフエスティーム(4高)

ハーバード大学のジョセップ教授は「セルフエスティームは、成功するのに必要な要素の一つである。」と主張しました。環境にあまり影響されず、自分を信じ、ありのままの自分を受け入れることができるセルフエスティームは、万が一失敗したとしてもその挫折感は軽いはずです。つまり、失敗にめげない事はトコトン挑戦し続けるエネルギー源となり、数多い挑戦は成功する確率をも上げるわけです。要するに、セルフエスティームがその人の人生に大きくかかわっていると言えるでしょう。 それでは、高いセルフエスティームはどのような人格形成に影響を及ぼすのでしょうか? セルフエスティームが人格形成 […]


セルフエスティームと自尊心は同じもの?

前回自分を信じることがセルフエスティームと言いましたが、決して自尊心とは違います。多くの本にセルフエスティームを自尊心と訳してありますが、筆者はセルフエスティームと自尊心は違うと思うのです。 友達にいやなことを言われ「自尊心が傷ついた(私は結構できる方だと思っていたけど、ひどいことを言われ傷ついた)」と表現するのですが、この時の自尊心はけしてセルフエスティームではないのです。セルフエスティームとは人に何かを言われたぐらいで簡単に傷つくものではないのです。つまり、よく使われている自尊心とは他人が自分をどう評価するかが重要であります。 他人と自分を比較し、も […]


強い心の源:セルフエスティーム(self-esteem)

KFCの創立者であるカーネル氏は66歳にチキンの営業を始め、1009回も断られます。アメリカの歴代大統領であるリンカーンは、事業に失敗を2回、落選は4回、47歳で副大統領にも失敗し、51歳でやっと大統領になりました。エジソンも、ライト兄弟も失敗と挫折なしに、発見もなかったという事実は言うまでもありません。伝記に残る偉人はもちろんのこと、成功に導いた人の中で、すべてがスムーズにいった人は誰一人いないのです。皆沢山の失敗をし、また数多くの挑戦をし、最後に成功を掴んだのです。つまり、もしかしたら何かを発見する、成功するには高い能力よりもむしろ沢山失敗し、挫折を […]


グローバルリーダーの育成(8) ~ 『失敗の本質』の本質~

再び注目される『失敗の本質』 小池百合子東京都知事は『失敗の本質~日本軍の組織論的研究~』(中央文庫)を愛読書として繰り返し読んでいるという。私の知り合いでも読んでいる人が多い。特に、最近シャープや東芝など、日本の大手老舗企業の様子がおかしくなったので、同書は再び注目されているようだ。   失敗は繰り返される 『失敗の本質』は「日本軍の組織の組織的研究」ではあるが、失敗は戦前の日本軍にとどまらず、日本全体の問題として当てはまり、戦前戦後の国家戦略から企業の運営に至るまで繰り返されている。何故なら、『失敗の本質』の本質は、日本型のリーダー育成の教 […]


グローバルリーダーの育成(7) ~ 必要条件 ~

暁星小学校の小学校英語教育は高い評点を付けられるべきですが、必ずしもグローバルリーダー育成を目指したわけではありません。医学部や難関大学に毎年多くの合格者を出している同校は、2020年の大学入試制度の改革に向けて、「企業努力」をしているのです。私立はどこも生き残りのため「企業努力」をしています。税金が公立校にばかり使われるのも、教育の多様性確保の見地から、歪んだ状態といえます。 グローバルリーダーになるための必要条件 グローバルリーダーになるための必要条件はいくつかあります。今後話を進めるために整理しておきます。 英語が自由に使いこなせること。 自分で考 […]


グローバルリーダーの育成(6) ~ 私立小学校の英語教育 ~

◊◊私立小学校の英語教育◊◊ 公立小学校の英語教育 公立小学校でも教育特区では様々な試みがなされています。 品川区では小中一貫教育が現在6校あり、小1から英語教育を導入しています。(例。日野小学校)先進的試みですが、ネイティブの音声の指導を低学年のときどの様にしているのかは不明です。 実体は、「年間限られた時間のネイティブスピーカーの指導」であるようです。英語教育は早ければ良いというものでもありません。早い時期にネイティブスピーカーの音声に触れなくては意味がありません。日本人の発音による音声指導はむしろ小さい子に有害です。やるならば、予算をつけてネイティ […]


グローバルリーダーの育成(5) ~ 語学学習の敏感期 ~

◊◊ 語学学習の敏感期 ◊◊ 文法学習の敏感期(3歳~8歳) 前回では「音素および音韻の敏感期(0歳~2歳)について述べましたが、今回は「文法学習の敏感期」について述べます。 音に対して敏感になることにより、赤ちゃんは単語を認識できるようになります。母親の一語文から始まります。さらに、文章のストリームの中から聞いたことのある単語を識別することができるようになります。これに、知的成熟が伴うと、2語文、3語文の理解へと進みます。このとき、「母親の語りかけ」が子どもの言語発達に大きく寄与します。赤ちゃんは、体内にいるときから、母親の声、肉声を好むように準備され […]


グローバルリーダーの育成(4) ~ 「英語耳」はいつ育てるか ~

◊◊「英語耳」はいつ育てるか◊◊ 言語取得の臨界期 先日テニス仲間からラインがありました。「2歳半の孫娘が英語教室に通うけど大丈夫ですか」。幼いうちから英語を始めて、日本語の取得に影響が出るのでは、との心配です。この様な懸念は年齢の高い人ほど多く持つ様です。事実10年ぐらい前の教育書を読むと、「日本語を取得する前に、英語を教えたりすると害がある」とする論調のものもありました。しかし、そのような懸念は「仮説」であって、実証研究ではありませんでした。現実にはそのようなことは起こりませんでした。 言語習得の臨界期に関しての研究において、Lenneberg(19 […]


グローバルリーダーの育成(3) ~ 大丈夫か、日本の英語教育改革 ~

♢♢大丈夫か、日本の英語教育改革♢♢   今までの教育改革の成果と今後の懸念 2020年から英語教育は「小学校3年生からの必修化」(週1単位 年間35単位時間程度)、「小学校5年生からの教科化」(週2単位 年間 70単位程度)が始まると本年度8月1日に文部科学省からポイントが示されました。韓国、中国に20年遅れで日本もスタートラインに立ちそうですが、準備や運営は大丈夫なのでしょうか。 「ゆとり教育」のときも、多くの現場では何をどの様にしたらよいにか分からず、狼狽し、それが教育改革の成果を半減させたとも聞いています。「総合の時間」をどう活用するか […]


グローバルリーダーの育成(2) ~ 英語力の国際間比較 ~

♢♢英語力の国際間比較♢♢ 残念ながら日本人の英語力は国際間比較において低下しています。世界各国では、グローバル化に備えて様々な対策を講じてきましたが、日本では英語教育においても改革が遅々として進まず、韓国や中国にも大きく水をあけられているのです。 日本では2020年から小学3年生から週1回、5,6年生は週2回の英語教育が実施されますが、韓国、中国に遅れること20年です。この意味は大きいのです。韓国、中国で英語教育を受けた人が成人し、今後グローバルな世界で活躍するのに反し、日本では2020年にようやくスタートラインに並ぶので、今後長期に渡ってグローバルな […]


グローバルリーダーの育成(1) ~ 日本の凋落とグローバルリーダーの不在 ~

♢♢日本の凋落とグローバルリーダーの不在♢♢ 今回から数回にわたり、グローバルリーダーの育成についてお話します。 今後どの様な方針で子育て・教育をしたらよいのか参考になれば幸いです。 日本の凋落 私がアメリカの大学院(ウォートンスクール)に留学した1977年頃は日本の経済も破竹の勢いで、日本の経営を褒めたたえる経営書も多く出ました。例えば社会学者エズラ・ヴォーゲルのベストセラー『Japan as Number One: Lessons for America』があります。大学院の経営学講義の中でも、著名な教授が「They (日本人)are as clev […]


ひきこもりの国

先日、精神科医の川畑先生が『子どもの精神療法』という本を書かれたので、出版祝いをセラプレイセンターの数名で行いました。家が近かったので、ご自宅近くまで車でお送りする道すがら、お互いに、最近の日本の子育て、教育状況を危惧する言葉が行き交いました。「本来ならば、どの様に対処すべきかもっと社会のムーブメントになってしかるべきだ」というのが共有の思いでした。 このコラムの「ひきこもりの国」とはマイケル・ジーレンジガーが2006年に上梓した本のタイトルで、内容は「引きこもりの国 ―日本 100万人の若者を自閉させるこの国の悲劇―」といってもよいでしょう。日本、韓国 […]