3. グローバルリーダー教育

グローバル教育、幼児期の英語教育、グローバルリーダーの育成についての専門家コラムです。


親のまなび 特別編 「失敗の本質の本質」 ~教育こそが全ての根源~

親のまなび 特別編 「失敗の本質の本質」 ~教育こそが全ての根源~   人類の進化とは前頭連合野の機能を高めることであり、子育て・教育が目指すべきはそこにあると言っても過言ではありません。これは「受験通信教育」の第七話で述べたことです。 しかしながら、日本の子育て・教育は今まで個別的なIQを高めることに偏重し、それらの各知能を参照にしながら問題解決する能力、人と関わる能力、いわゆる前頭連合野の機能を高めることに重点を置いていませんでした。IQテストは米国陸軍では人材鑑別に役に立たないとしてすぐに廃止されたと聞きます。受験勉強も、これからの時代が […]


モンテッソーリと福澤諭吉とルソーの教育法の共通点(3)

第三話 福澤諭吉の育ち、教育観、『福翁自伝』  諭吉型人間はどの様にして育つのか 『福翁自伝』の中から幼児から 15 歳くらいまでの、子育て教育に関する部分を抜粋します。自然に子どもらしく育っていることが分かります。 a から g のカッコ内が、『福翁自伝』からの抜粋です。ご存知の通り、例年、慶応幼稚舎、慶応義塾横浜初等部受験においては『福翁自伝』を読んで、願書に所感を述べる必要があります。 以下、抜粋 a.「私が少年の時から家にいて、よくしゃべりもし、飛びまわり」 b.「またそのしつけ方は温和と活?とを旨として、たいていのところまでは子供の自由に任せる […]


モンテッソーリと福澤諭吉とルソーの教育法の共通点(2)

第二話  ルソー(Jean-Jacques Rousseau)の紹介 子どもの発見 18 世紀のフランスの啓蒙主義思想家で『社会契約論』を著した。 啓蒙主義思想とは、「人間は正しく考える力をもっている」とする考え方で、絶対王政や王権神授説を排除し、フランス革命を導いていく思想的な根拠となりました。 ルソーは教育論として『エミール』を著しました。 教育論として画期的だったのは: ① 教育の目標として「人間の自然性」という概念を持ち込んだ。(自然に帰れ!) ② 「子どもの発見」 当時子どもは単に小さな大人とみなされていました。 *子どもは小さな大人ではない。 […]


モンテッソーリと福澤諭吉とルソーの教育法の共通点(1)

この三者を並べて論じることは通常ありませんが、子育て・教育の本質に関して共通点があり、より良き子育てや教育を考える上で有益と思いますので私は敢えて行います。 教育には、大きく分けて、「教え込む」子育て・教育法と、子どもが本来持っている「発達しようとする生命力」を「引き出す(educate)」子育て・教育法があるのです。 「教え込む」子育て・教育法は昔から幅広く実践されていますが、知育偏重であったり、子どもに「きつく」「厳しく」「怖く」接する傾向があります。 一方、ルソーの『エミール』に始まる教育論、福澤諭吉の子育て観、モンテッソーリ教育法の子育て・教育は […]


子どもの発達とモンテッソーリ教育 ~言語取得と敏感期~

人間は言葉を話します。「吸収する力」によって環境から学び、徐々に獲得していきます。子どもはどのような言語でも習得できる能力を持って生まれきます。子どもの環境の中に複数の言語があれば、そのいずれも幼児期は容易に吸収し獲得することができます。 概ね0~3歳の子どもは言語の敏感期であり、言葉を話したい、知りたい思いでよく聞き、よく話す口元を見ることを毎日繰り返しています。子どもの環境にある母語(お腹の中から聞いていた一番好きな音=お母様が話す言葉)と環境にある基本的な言葉である母国語を吸収していきます。 五感の優れたこの時期の子どもの耳は本当に優れているという […]


2021年度小学校入試に於ける学校選びの秘訣 ~ 小学校受験対策 ~

<ミスマッチで子どもを不幸にしないために> ~ 新型コロナウィルス、COVID-19 の流行の影響を受けて ~ 今年ほど学校選びがむずかしい年はない。 理由は3つ。学校説明会や私立小学校フェアなどが軒並み中止となり、情報過疎が起こっていること。受験準備の遅れから、子どもの準備が間に合わない、望む学校のレベルに達しない可能性があること。併願予測や過去問対策が通用しないこと。不利な状況であることは間違いがないが、学校選びは子どもの一生を左右しかねない大きな問題。親の責任において、最善を尽くす以外方法はない。そのためには何をすべきか。必ず(1)から順に進んでい […]


2021年度入試に起こる変化について ~ 小学校受験対策 ~

新型コロナウィルス、COVID-19の流行は、間違いなく2021年度小学校受験考査に影響を及ぼす。長引いた休校、休園、学校説明会等公開行事の相次ぐ中止による情報過疎、幼児教室にも通えず、受験準備は停滞、更には9月入学なども議論され、今年の年長児はウィルスに翻弄されることとなる。一連の影響が、秋の考査をどのように変えるのか、現時点でもはっきりしていることをお伝えする。受験を制する者は情報を制する者。知ることは受験準備を有利にする。是非頭に入れておいていただきたい。 <三密対策> 入試を行うことは止むを得ない。しかし、あくまで「十分な対策の上で」となる。ただ […]


養育者のセルフエスティーム(自尊感情)と世代間伝達

「我が子に自分みたいな人生を送って欲しくない」、「自分よりはもっと幸せになって欲しい」と思ってはいませんか?もし、そうであるとしましたら、子育てを見直す必要があると思います。なぜならば、親のセルフエスティームは愛着と同じように世代を受け続き伝達するからです。(詳しくは筆者の「愛着タイプと養育の特徴」をご覧になってください。)つまり、親が高いセルフエスティームを持つと子供も高いセルフエスティームを持つ可能性が高いとのことです。 まず親のセルフエスティームを知るために表1.にMimura & Griffiths (2007)がRosenbergのセル […]


心理カウンセリングとは?

心理カウンセリングとは悩みを自分でコントロールできず、日常生活に支障をきたす時に受けるもの、もしくは精神科治療と並行して受けるものだと思っていませんか? もちろん、上記の様な理由でカウンセリングをされる方もいらっしゃいますが、本来カウンセリングはもう少し身近なものとしてとらえて良いと思われます。悩みの種類も人それぞれであるのと同じようにその感じ方も人それぞれなのです。つまり、どんなささいな悩みでもカウンセリングを受ける立派な理由になります。 カウンセリングは、本人の悩みの深刻さと関係ないだけではなく、予防の意味で受ける事も可能です。西洋では予防のプロセス […]


グローバルリーダーの育成(8) ~ 『失敗の本質』の本質~

再び注目される『失敗の本質』 小池百合子東京都知事は『失敗の本質~日本軍の組織論的研究~』(中央文庫)を愛読書として繰り返し読んでいるという。私の知り合いでも読んでいる人が多い。特に、最近シャープや東芝など、日本の大手老舗企業の様子がおかしくなったので、同書は再び注目されているようだ。   失敗は繰り返される 『失敗の本質』は「日本軍の組織の組織的研究」ではあるが、失敗は戦前の日本軍にとどまらず、日本全体の問題として当てはまり、戦前戦後の国家戦略から企業の運営に至るまで繰り返されている。何故なら、『失敗の本質』の本質は、日本型のリーダー育成の教 […]


グローバルリーダーの育成(7) ~ 必要条件 ~

暁星小学校の小学校英語教育は高い評点を付けられるべきですが、必ずしもグローバルリーダー育成を目指したわけではありません。医学部や難関大学に毎年多くの合格者を出している同校は、2020年の大学入試制度の改革に向けて、「企業努力」をしているのです。私立はどこも生き残りのため「企業努力」をしています。税金が公立校にばかり使われるのも、教育の多様性確保の見地から、歪んだ状態といえます。 グローバルリーダーになるための必要条件 グローバルリーダーになるための必要条件はいくつかあります。今後話を進めるために整理しておきます。 英語が自由に使いこなせること。 自分で考 […]


グローバルリーダーの育成(6) ~ 私立小学校の英語教育 ~

◊◊私立小学校の英語教育◊◊ 公立小学校の英語教育 公立小学校でも教育特区では様々な試みがなされています。 品川区では小中一貫教育が現在6校あり、小1から英語教育を導入しています。(例。日野小学校)先進的試みですが、ネイティブの音声の指導を低学年のときどの様にしているのかは不明です。 実体は、「年間限られた時間のネイティブスピーカーの指導」であるようです。英語教育は早ければ良いというものでもありません。早い時期にネイティブスピーカーの音声に触れなくては意味がありません。日本人の発音による音声指導はむしろ小さい子に有害です。やるならば、予算をつけてネイティ […]


グローバルリーダーの育成(5) ~ 語学学習の敏感期 ~

◊◊ 語学学習の敏感期 ◊◊ 文法学習の敏感期(3歳~8歳) 前回では「音素および音韻の敏感期(0歳~2歳)について述べましたが、今回は「文法学習の敏感期」について述べます。 音に対して敏感になることにより、赤ちゃんは単語を認識できるようになります。母親の一語文から始まります。さらに、文章のストリームの中から聞いたことのある単語を識別することができるようになります。これに、知的成熟が伴うと、2語文、3語文の理解へと進みます。このとき、「母親の語りかけ」が子どもの言語発達に大きく寄与します。赤ちゃんは、体内にいるときから、母親の声、肉声を好むように準備され […]


グローバルリーダーの育成(4) ~ 「英語耳」はいつ育てるか ~

◊◊「英語耳」はいつ育てるか◊◊ 言語取得の臨界期 先日テニス仲間からラインがありました。「2歳半の孫娘が英語教室に通うけど大丈夫ですか」。幼いうちから英語を始めて、日本語の取得に影響が出るのでは、との心配です。この様な懸念は年齢の高い人ほど多く持つ様です。事実10年ぐらい前の教育書を読むと、「日本語を取得する前に、英語を教えたりすると害がある」とする論調のものもありました。しかし、そのような懸念は「仮説」であって、実証研究ではありませんでした。現実にはそのようなことは起こりませんでした。 言語習得の臨界期に関しての研究において、Lenneberg(19 […]


グローバルリーダーの育成(3) ~ 大丈夫か、日本の英語教育改革 ~

♢♢大丈夫か、日本の英語教育改革♢♢   今までの教育改革の成果と今後の懸念 2020年から英語教育は「小学校3年生からの必修化」(週1単位 年間35単位時間程度)、「小学校5年生からの教科化」(週2単位 年間 70単位程度)が始まると本年度8月1日に文部科学省からポイントが示されました。韓国、中国に20年遅れで日本もスタートラインに立ちそうですが、準備や運営は大丈夫なのでしょうか。 「ゆとり教育」のときも、多くの現場では何をどの様にしたらよいにか分からず、狼狽し、それが教育改革の成果を半減させたとも聞いています。「総合の時間」をどう活用するか […]


グローバルリーダーの育成(2) ~ 英語力の国際間比較 ~

♢♢英語力の国際間比較♢♢ 残念ながら日本人の英語力は国際間比較において低下しています。世界各国では、グローバル化に備えて様々な対策を講じてきましたが、日本では英語教育においても改革が遅々として進まず、韓国や中国にも大きく水をあけられているのです。 日本では2020年から小学3年生から週1回、5,6年生は週2回の英語教育が実施されますが、韓国、中国に遅れること20年です。この意味は大きいのです。韓国、中国で英語教育を受けた人が成人し、今後グローバルな世界で活躍するのに反し、日本では2020年にようやくスタートラインに並ぶので、今後長期に渡ってグローバルな […]


グローバルリーダーの育成(1) ~ 日本の凋落とグローバルリーダーの不在 ~

♢♢日本の凋落とグローバルリーダーの不在♢♢ 今回から数回にわたり、グローバルリーダーの育成についてお話します。 今後どの様な方針で子育て・教育をしたらよいのか参考になれば幸いです。 日本の凋落 私がアメリカの大学院(ウォートンスクール)に留学した1977年頃は日本の経済も破竹の勢いで、日本の経営を褒めたたえる経営書も多く出ました。例えば社会学者エズラ・ヴォーゲルのベストセラー『Japan as Number One: Lessons for America』があります。大学院の経営学講義の中でも、著名な教授が「They (日本人)are as clev […]