安藤徳彰


About 安藤徳彰

(あんどう のりあき) 慶應義塾大学卒業後、ペンシルバニア大学大学院(ウォートンスクール)にてMBA取得。 ICE幼児教室、ICE私立専門塾などを創業。2014年6月に教育部門の運営を栄光グループにバトンタッチし、株式会社栄光の教育顧問に就任。 2015年10月に株式会社栄光顧問退任

成長の樹 6 ~人類進化の方向性(より良く生きるために)~

より良き保育・子育て・教育を見出すためには、その教育法がどの様な人間を造りだすかを見極めることが必要です。同時に、人類の進化の方向性を探り、教育法と人類の進化が合致しているか確認しなくてはなりません。人類進化の方向性と教育法が合致していれば、その教育法は自然の摂理に沿ったものと言えましょう。 人類の進化は「前頭連合野」の発達によるもので、他の類人と比べ「前頭連合野」の大きさが5倍に発達しました。 進化論的な見方で人類の進化を見てきましょう。 人類はよりよく生きるために、二つの方向性の進化をしました。 ① 計画能力、問題解決能力の向上 ② 社会の一員として […]


モンテッソーリと福澤諭吉とルソーの教育法の共通点(2)

第二話  ルソー(Jean-Jacques Rousseau)の紹介 子どもの発見 18 世紀のフランスの啓蒙主義思想家で『社会契約論』を著した。 啓蒙主義思想とは、「人間は正しく考える力をもっている」とする考え方で、絶対王政や王権神授説を排除し、フランス革命を導いていく思想的な根拠となりました。 ルソーは教育論として『エミール』を著しました。 教育論として画期的だったのは: ① 教育の目標として「人間の自然性」という概念を持ち込んだ。(自然に帰れ!) ② 「子どもの発見」 当時子どもは単に小さな大人とみなされていました。 *子どもは小さな大人ではない。 […]


モンテッソーリと福澤諭吉とルソーの教育法の共通点(1)

この三者を並べて論じることは通常ありませんが、子育て・教育の本質に関して共通点があり、より良き子育てや教育を考える上で有益と思いますので私は敢えて行います。 教育には、大きく分けて、「教え込む」子育て・教育法と、子どもが本来持っている「発達しようとする生命力」を「引き出す(educate)」子育て・教育法があるのです。 「教え込む」子育て・教育法は昔から幅広く実践されていますが、知育偏重であったり、子どもに「きつく」「厳しく」「怖く」接する傾向があります。 一方、ルソーの『エミール』に始まる教育論、福澤諭吉の子育て観、モンテッソーリ教育法の子育て・教育は […]


新型コロナ流行、今秋の幼稚園・小学校受験に向け、今何をすべきか?

*社会情勢の影響 新型コロナウィルス(COVID-19)感染拡大の影響を受け、2020年3月2日から全国の小・中・高校が休校になるなど、大きな社会的変化が沸き起こった。これは、今秋の受験にも少なからぬ影響を及ぼすことになるだろう。いくつかの問題点を指摘する。 1)受験人口の減少 子どもが外にも出られないこのご時世に、何よりも大切な我が子をいくつもの幼児教室に連れ回すことを敬遠するご家庭も多いだろう。そういった不安や準備不足などから、受験自体を止める判断をする家庭もあるだろう。平時とは言えない環境の今年、受験人口が減少することは容易に想像ができる。言い換え […]


2019年度の総括 各国の教育改革(1)

幼稚園・小学校受験所感 昨年の受験は概ね一昨年と変化はなかったと思いますが詳細は今後コラムに漸次投稿します。昨年度私として感じたことを述べます。 願書・面接指導を正式なサービスとする 昨年度は願書・面接指導を行っておりませんでしたが、縁あって数家族の方の願書・面接にかかわりました。幸い皆さま最善の学校への進学が決まりましたが、直前であったりして十分な対応ができなかった面もありました。本年度は体制を整えて臨むことといたします。 本物になること 私が幼児教室を創業し、運営していたころ、小学校難関校の考査の一部はかなり難問で、子どもに準備のためかなりの負荷を負 […]


成長の樹4 各発達段階には発達課題がある

各発達段階には発達課題がある 幼児教育研究者の成果の紹介 エリクソン 今回から、研究者の中から代表的な人の発見をたどりたいと思います。その中で、私なりの解釈を付け加えていきたいと思います。 エリクソンは多くの発達心理学者に影響を与えています。佐々木正美先生もエリクソンを学びました。 エリクソン(米国) 乳児期の「基本的信頼関係」確立の重要性を主張、ライフサイクルモデルの構築しました。 エリクソンは人間の成長を8段階に分けて考え、それぞれのライフサイクルを健康に幸福に生きていくためにはそれぞれの段階で、解決しなくてはいけない発達課(CRISIS)があると説 […]


成長の樹3 EEE(Evolutionary 進化的に、Expected 期待された、Environment 環境)

EEE(Evolutionary 進化的に、Expected 期待された、Environment 環境) 注目すべきは、近年、脳科学の進化が著しく、子どもの脳の発達の順序、様子、各種脳内ホルモン等との関連が最新の脳科学で解明され、どの様な子育て・教育が望ましいか、または子どもを損ねるのかが次第に分かってきたことです。今までは膨大な子どもの観察から得られた知見が、脳科学の進化により、脳の作用の内側から解明されてきたことです。また、海外における多くの研究、実践によって多くの新しい事実が分かってきました。 日本の脳学者の中にも、『世界一の子ども教育 モンテッソ […]


成長の樹2 多くの幼児教育の研究者たちが発見した共通のこと

多くの幼児教育の研究者たちが発見した共通のこと 子どもを健全に育成し、「伸びる子に育て」、生き甲斐のある人生を送れるように育てるには、どの様にすれば良いのでしょうか。その答えを探すために、信頼性の高い、児童精神医学、臨床医、発達心理学等に携わる研究者たちの研究成果を見てみると、全て、同じ方向性の発見です。研究で明らかになったことをいろいろな角度から主張していますが、方向性では同じなのです。 このことは前回も述べました。 名前を挙げるならば、エリック エリクソン、アンリ ワロン、ロバート エムディ、マーガレット マーラー、ジェームス マスターソン、ドナルド […]


成長の樹1 三つ子の魂百まで 乳幼児期の大切さ

三つ子の魂百まで 乳幼児期の大切さ 多くの教育論を調べると、人の成長にとって乳幼児期が大切なことがわかります。しかし乳幼児期がその後の人生にどのような影響を与えるかについては、ニュアンスがまちまちです。 私は人の成長は、樹が成長するのに似ていると思います。 樹は、種子が発芽して双葉へと育ち、やがて年輪を積み重ねますが、新しい年輪は今までの年輪の外側に形成されます。つまり、樹齢100年の大樹も、その中心には0年から3年の年輪が存在していて、それがその樹の核となるのです。人間の場合は更に顕著で、生まれてから3歳までの生育環境がその人の核を形成し、その後の人格 […]


幼稚園受験の明暗 失敗のパターンと合格の秘訣

今回は長年幼稚園受験に関わって来た教師の意見を紹介します。少し手厳しいですが、有名幼稚園受験をお考えの方は早めに読まれると参考になると思います。グリーン表示は主催者加筆の部分です。(主催者) 今回は少し厳しい事をお話し申しあげます。 幼稚園受験でご縁をいただけた方と、涙をのんだ方との違いには明らかな共通性があります。受け持ちの生徒はほとんど第一志望に合格いたしましたが、以下は涙をのんだ少数派の事例です。 私がお手伝いさせていただいた中で、最終的には第二志望のところへご入園なさった方は、私から拝見すると、もっと努力が必要な方です。概してお母様は自信をお持ち […]


グローバルリーダーの育成(8) ~ 『失敗の本質』の本質~

再び注目される『失敗の本質』 小池百合子東京都知事は『失敗の本質~日本軍の組織論的研究~』(中央文庫)を愛読書として繰り返し読んでいるという。私の知り合いでも読んでいる人が多い。特に、最近シャープや東芝など、日本の大手老舗企業の様子がおかしくなったので、同書は再び注目されているようだ。   失敗は繰り返される 『失敗の本質』は「日本軍の組織の組織的研究」ではあるが、失敗は戦前の日本軍にとどまらず、日本全体の問題として当てはまり、戦前戦後の国家戦略から企業の運営に至るまで繰り返されている。何故なら、『失敗の本質』の本質は、日本型のリーダー育成の教 […]


グローバルリーダーの育成(7) ~ 必要条件 ~

暁星小学校の小学校英語教育は高い評点を付けられるべきですが、必ずしもグローバルリーダー育成を目指したわけではありません。医学部や難関大学に毎年多くの合格者を出している同校は、2020年の大学入試制度の改革に向けて、「企業努力」をしているのです。私立はどこも生き残りのため「企業努力」をしています。税金が公立校にばかり使われるのも、教育の多様性確保の見地から、歪んだ状態といえます。 グローバルリーダーになるための必要条件 グローバルリーダーになるための必要条件はいくつかあります。今後話を進めるために整理しておきます。 英語が自由に使いこなせること。 自分で考 […]


グローバルリーダーの育成(6) ~ 私立小学校の英語教育 ~

◊◊私立小学校の英語教育◊◊ 公立小学校の英語教育 公立小学校でも教育特区では様々な試みがなされています。 品川区では小中一貫教育が現在6校あり、小1から英語教育を導入しています。(例。日野小学校)先進的試みですが、ネイティブの音声の指導を低学年のときどの様にしているのかは不明です。 実体は、「年間限られた時間のネイティブスピーカーの指導」であるようです。英語教育は早ければ良いというものでもありません。早い時期にネイティブスピーカーの音声に触れなくては意味がありません。日本人の発音による音声指導はむしろ小さい子に有害です。やるならば、予算をつけてネイティ […]


グローバルリーダーの育成(5) ~ 語学学習の敏感期 ~

◊◊ 語学学習の敏感期 ◊◊ 文法学習の敏感期(3歳~8歳) 前回では「音素および音韻の敏感期(0歳~2歳)について述べましたが、今回は「文法学習の敏感期」について述べます。 音に対して敏感になることにより、赤ちゃんは単語を認識できるようになります。母親の一語文から始まります。さらに、文章のストリームの中から聞いたことのある単語を識別することができるようになります。これに、知的成熟が伴うと、2語文、3語文の理解へと進みます。このとき、「母親の語りかけ」が子どもの言語発達に大きく寄与します。赤ちゃんは、体内にいるときから、母親の声、肉声を好むように準備され […]


グローバルリーダーの育成(4) ~ 「英語耳」はいつ育てるか ~

◊◊「英語耳」はいつ育てるか◊◊ 言語取得の臨界期 先日テニス仲間からラインがありました。「2歳半の孫娘が英語教室に通うけど大丈夫ですか」。幼いうちから英語を始めて、日本語の取得に影響が出るのでは、との心配です。この様な懸念は年齢の高い人ほど多く持つ様です。事実10年ぐらい前の教育書を読むと、「日本語を取得する前に、英語を教えたりすると害がある」とする論調のものもありました。しかし、そのような懸念は「仮説」であって、実証研究ではありませんでした。現実にはそのようなことは起こりませんでした。 言語習得の臨界期に関しての研究において、Lenneberg(19 […]


グローバルリーダーの育成(3) ~ 大丈夫か、日本の英語教育改革 ~

♢♢大丈夫か、日本の英語教育改革♢♢   今までの教育改革の成果と今後の懸念 2020年から英語教育は「小学校3年生からの必修化」(週1単位 年間35単位時間程度)、「小学校5年生からの教科化」(週2単位 年間 70単位程度)が始まると本年度8月1日に文部科学省からポイントが示されました。韓国、中国に20年遅れで日本もスタートラインに立ちそうですが、準備や運営は大丈夫なのでしょうか。 「ゆとり教育」のときも、多くの現場では何をどの様にしたらよいにか分からず、狼狽し、それが教育改革の成果を半減させたとも聞いています。「総合の時間」をどう活用するか […]


グローバルリーダーの育成(2) ~ 英語力の国際間比較 ~

♢♢英語力の国際間比較♢♢ 残念ながら日本人の英語力は国際間比較において低下しています。世界各国では、グローバル化に備えて様々な対策を講じてきましたが、日本では英語教育においても改革が遅々として進まず、韓国や中国にも大きく水をあけられているのです。 日本では2020年から小学3年生から週1回、5,6年生は週2回の英語教育が実施されますが、韓国、中国に遅れること20年です。この意味は大きいのです。韓国、中国で英語教育を受けた人が成人し、今後グローバルな世界で活躍するのに反し、日本では2020年にようやくスタートラインに並ぶので、今後長期に渡ってグローバルな […]


グローバルリーダーの育成(1) ~ 日本の凋落とグローバルリーダーの不在 ~

♢♢日本の凋落とグローバルリーダーの不在♢♢ 今回から数回にわたり、グローバルリーダーの育成についてお話します。 今後どの様な方針で子育て・教育をしたらよいのか参考になれば幸いです。 日本の凋落 私がアメリカの大学院(ウォートンスクール)に留学した1977年頃は日本の経済も破竹の勢いで、日本の経営を褒めたたえる経営書も多く出ました。例えば社会学者エズラ・ヴォーゲルのベストセラー『Japan as Number One: Lessons for America』があります。大学院の経営学講義の中でも、著名な教授が「They (日本人)are as clev […]


ひきこもりの国

先日、精神科医の川畑先生が『子どもの精神療法』という本を書かれたので、出版祝いをセラプレイセンターの数名で行いました。家が近かったので、ご自宅近くまで車でお送りする道すがら、お互いに、最近の日本の子育て、教育状況を危惧する言葉が行き交いました。「本来ならば、どの様に対処すべきかもっと社会のムーブメントになってしかるべきだ」というのが共有の思いでした。 このコラムの「ひきこもりの国」とはマイケル・ジーレンジガーが2006年に上梓した本のタイトルで、内容は「引きこもりの国 ―日本 100万人の若者を自閉させるこの国の悲劇―」といってもよいでしょう。日本、韓国 […]