高校受験 都立高校入試制度のいま・むかし


昨今、中学受験が過熱している、と言われています。実際、東京都内には中学受験率が90%以上、という公立小学校もあります。
そうは言っても、東京とその近隣自治体に限っても、私立中学受験率は15%程度です。受験した全員が私立中学に進んだと仮定し、公立中高一貫校に進学した数を考慮に入れても、80%以上のお子様が高校受験を経験する計算になります。そして、高校受験においては、ほとんどのお子様が都立高校を第1志望校としています。
では、多くのお子様にとって、そして子どもを持つ多くの親御様にとって、避けて通ることのできない都立高校受験では、どのような選抜方法が取られているのでしょう。

(1) 都立高校入試制度の改革

親御様の中には、都立高校受験の経験をお持ちの方もいらっしゃることと思います。最初にお伝えしたいことは、親御様が経験された都立高校受験と、これからお子様が経験されるであろうそれとは、大きく異なっているということです。これまでの入試制度改革について、主なものをまとめます。年代と共に表記しましたので、親御様が経験された入試がどのようなものであったのか、いつ、何が変わったのか、比べながらご覧になってください。
1967年 全日制普通科で「学校群制度」を導入する
→受験科目は3教科で、所謂「内申」の評価にも重きが置かれるようになった
1982年 全日制普通科で「学校群制度」を廃止し、「グループ合同選抜制度」を導入する
→受験科目が5教科となり、学区内に設定されたグループの中で併願ができた
1994年 全日制普通科で「グループ合同選抜制度」を廃止し、「単独選抜制度」を導入する
→「学力検査に基づく入試」第1次募集(所謂「一般入試」)での併願はできなくなった
1995年 普通科に推薦を導入する
2001年 「進学指導重点校」を設け、第1号に日比谷・西・戸山・八王子東が指定される
→日比谷が入試問題の「自校作成校」となる
2003年 学区を撤廃する
2005年 公立中高一貫校の設置が始まる
2007年 「進学指導特別推進校」として小山台・駒場・新宿・町田・国分寺の5校が新たに追加される
2016年 実技4教科(音楽、美術、保健体育、技術・家庭)の調査書換算方法が「実技の評定の合計×2」に変更になる
→「実技の評定の合計×1.3(または1.2)」に比べて,内申点における実技4教科の割合が高くなった
 

(2) 現行の入試制度

都立高校の入試には「推薦入試」、「学力検査に基づく入試(第1次募集・第2次募集・分割募集)」があります。推薦入試の後に第1次募集が実施されます。第2次募集については、第1次募集の結果、入学手続き定員が募集人員に達しない学校で行われます。また、都立高校にはあらかじめ募集人員を分割し、「分割前期募集(第1次募集と同じ日程)」と「分割後期募集(第2次募集と同じ日程)」の2回に分けて募集を行う学校があります。

① 推薦入試

都立高校の推薦入試は、所謂、学力テストがなく、一般入試に先んじて1月下旬に行なわれます。推薦入試で不合格だった場合も、一般入試で同じ学校を受験することができたり、一般入試では別の都立高校を受験することもできたりするため、人気が高く非常に狭き門となるケースが多いようです。推薦入試には「一般推薦」と「文化・スポーツ等特別推薦」があります。推薦入試によって、募集人員のうち10%~30%を選抜します。都立高校の推薦入試で選抜に用いる資料や選抜方法は、大きく分けて以下の3点です。

1. 調査書

〇 所謂「内申点」です。
〇 推薦入試で用いられる「調査書」の点数は、一般に9教科全ての評定をそのまま積算した、所謂「素内申」が用いられます。

2. 面接・集団討論

〇 全校で個人面接と集団討論が実施されます(エンカレッジスクールは個人面接のみ実施)。
〇 個人面接では、出願の動機・理由、高校生活に対する意欲、規範意識・生活態度や自己PRカードの記載内容などを確かめたり、質問の内容を的確に把握し適切に答える能力や表現力等を見たりします。
〇 個人面接の時間や面接官の人数などは各高校によって異なります。
〇 集団討論ではコミュニケーション能力や協調性・思考力・判断力・表現力などを評価します。
〇 集団討論の実施方法も各校様々ですが、受験生5~6名で30分程度の学校が多いようです。

3. 作文・小論文・実技などの検査

〇 作文・小論文・実技などの検査から1つ以上実施されます。
〇 どの検査を実施するかは各高校によって異なります。
上記の3点の他、自己PRカードを出願時に志願する学校へ提出します。自己PRカードの内容は、面接を行う場合の資料や入試の合格判定の資料の一部として活用したり、学校生活に対する意欲等を確認したりする資料になります(面接を実施しない学校の場合には、入学手続き後に学校へ提出)。自己PRカードの内容を点数化することはありません。自己PRカードには「志望理由について」、「中学校生活の中で得たことについて」、「高等学校卒業後の進路について」の3項目を記入します。
調査書、個人面接及び集団討論、作文・小論文・実技等の検査は、各学校が定めた基準により点数化され、その合計点(総合成績)によって選考されます。以前はほとんどの学校で、調査書(内申点)の割合が高い推薦入試の選抜でしたが、現在は調査書の配点の割合が全体の50%までとなっています。また、どの高校でも面接・集団討論のほか、作文や小論文・実技などの検査が必ず実施されるようになっています。

② 学力検査に基づく入試第1次募集(一般入試)

学力検査の教科は英語・数学・国語・理科・社会の5教科の中から3教科以上を各学校で定めます。28年度より全日制課程は原則として全校が5教科入試となりました。選考は学力検査の得点および調査書点(9教科の評定を点数化)で行う学校がほとんどです。面接・小論文または作文・実技検査を実施する学校もあります。これらの点数を1000点満点に総合し、選抜します。学力検査と内申の比重は,以前は「7:3」、「6:4」、「5:5」、「4:6」の中から各校が選択していましたが,現在は7:3に統一されました(学力検査700点、調査書300点。調査書点・学力検査点の算出方法については④で述べます)。

③ 自校作成校と共通問題校

東京都は「進学指導校」として以下の学校を指定しています。
1. 進学指導重点校(所謂「都立トップ校」)
日比谷、西、国立、青山、立川、戸山、八王子東
2. 進学指導特別推進校
国際、駒場、小山台、町田、国分寺、新宿、小松川
3. 進学指導推進校
江戸川、北園、江北、小金井北、城東、墨田川、竹早、調布北、豊多摩、日野台、三田、武蔵野北、多摩科学技術
2014年度入試から進学指導重点校(日比谷・西・国立・青山・立川・戸山・八王子東)、進学重視型単位制高校(国分寺・新宿・墨田川)、併設型中高一貫教育校(高校からの入学者を受け入れている、中学校を併設する学校。大泉・白?・富士・武蔵・両国)の3つのグループに分けて、学力検査問題をグループで共同作成していました。
上記の15校を「グループ作成校」、その他の都立高校を「共通問題校」と呼んできましたが、2018年度入試から、進学指導重点校及び進学重視型単位制高校は、従来(2013年以前)の自校で問題を作成する形式に戻し、各学校が求める生徒を選抜できる検査問題を作成しています。併設型中高一貫教育校は、グループ作成による効果やメリットをいかし、今後も入試問題をグループ作成していきます。このような変化により、特に日比谷、西、国立をはじめとする進学指導重点校では、2018年度以降の入試問題は難化しました。
自校作成問題校以外の「共通問題校」では、都立高校共通問題で入試を行います。中学校で習う学習の基礎がしっかりと定着できていることが求められます。共通問題校の中でも進学対策に組織的・計画的に取り組む都立高校として、進学指導特別推進校や進学指導推進校に指定されている学校があり、難関大学合格に向けた質の高い教育が行われています。

④ 調査書点・学力検査点の算出方法

都立高校の一般入試は学力検査点と調査書点を合計した総合得点順に選抜されます。 ②で述べた通り、全日制課程の場合、原則として学力検査点は700点、調査書点は300点、総合得点は1000点満点です。面接や実技を実施する学校ではさらにそれらの得点も加えた総合成績順に選抜されます。

1. 調査書

3年次の9教科の評定(所謂「通知表」につけられる、各教科1~5の評価)を使用し、下記のように調査書点を算出します。
〇手順1 換算内申を算出
入試科目である5教科はそのまま積算し、実技4教科は2倍します。
国数英社理の評定合計×1+体音美技・家の評定合計×2=換算内申(65点満点)
〇手順2 換算内申を300点満点に換算
換算内申÷65×300=調査書点(300点満点)

2. 学力検査

学力検査は5教科(国語・数学・英語・社会・理科)で、各教科100点満点です。
5教科合計の得点を700点満点に拡大した数値が学力検査点となります。
入試得点÷500×700=学力検査点(700点満点)
これまで述べてきたことから、親御様世代が経験された都立高校受験の制度と現在のそれとは、大きく変わったことがご理解いただけたと思います。また、今後も改革が行われていくと予想されます。
入試制度の変化によって、入試が「難しくなった」「易しくなった」とは一概には言えません。ただ、「入試の今」を知ることは進学先の選択において、最低限必要なことであるのは間違いありません。適切な情報を得ることで、お子様にとっても親御様にとっても、悔いのない最善の高校受験をお迎えください。

2019年9月17日
GLE(Global Leader Education)
中学受験・高校受験
担当 加藤 恵