愛着タイプと養育の特徴


書店やネットで目次も見てないのにタイトルだけで心を打たれ、ついつい本を買ったしまった経験はありませんか?筆者は3日前、ある本のタイトルに心を強く打たれ衝動買いをしてしまいました。しかもその本は実は絶版中でしたので、あらゆる中古書店のサイトに入り、目が充血するまで夢中になり見つけ出してその場ですぐ購入しました。筆者の心を奪った本のタイトルは「子は99%母親の努力で完成する。」でした。
もちろん遺伝もありますし、気質というのもありますので、同じような環境で育っても同じようには育ちません。ですけれど、この本のタイトルのように子供は99%母親の努力で完成するのなら、その方法を何とか知り、できることなら何でもしたくなるのが親の気持ちだと思います。
愛着は環境(養育者の関わり方)に影響されます。そしてまた、愛着は子供の将来に大きな影響を及ぼします。それでは、子供の愛着タイプと養育者の関わり方の特徴についてご紹介したいと思います。
愛着タイプはメアリーエインスワースがストレンジシチュエーションという実験から分類しました。ストレンジシチュエーションは養育者と見知らぬ人が部屋を出たり入ったりする時、1歳から1歳半の乳幼児の反応で愛着タイプを3つに分けました。後にメインとソロモンという人がこの3つのタイプのどこにも入らない愛着タイプを見つけそれを無秩序、無方向型と名づけました。各愛着タイプのストレンジシチュエーションの実験での反応を表1.に述べました。

表1.ストレンジシチュエーションでの反応
安定型 回避型 抵抗/アンビヴァレント 無秩序、無方向型
母親と離れることを嫌がり、再会すると喜ぶ。 母親と離れても泣かず、また母親と再会しても喜ばない。 母親にべったりで離れることを極端に嫌がる。 母親に近寄りながら拒否するという混乱しているような行動をする。

 
このように養育者と分離や再会を繰り返し、その時の幼児の反応でその愛着タイプが分類されたということです。それでは、このような4つの愛着タイプの子供への養育者の関わり方にはどのような特徴があるのでしょうか?愛着タイプ別の子供に対する養育者の関わりは表2.のようであると言われています。

表2.養育者の関わり方
安定型 l  子供の状態や変化などに敏感。
l  過剰また無理な働きかけをしない。
l  子供との相互交渉は調和的。
l  遊びやスキンシップを楽しむ。
回避型 l  子供に否定的に振舞う。
l  子供に微笑んだりスキンシップをすることが少ない。
l  子供の行動をコントロールしようとする。
抵抗/アンビヴァレント型 l  一貫性、敏感性が欠ける関わり方。
l  養育者と子供の間で肯定的な関わり方はあまりない。
無秩序、無方向型 l  精神状態が不安定。
l  突発的に表情や声などの言動を変える。
l  子供を虐待したり、うつを訴える養育者が多い。

 
ミリアムとスチールの研究で、妊婦とその夫の愛着タイプが分かれば生まれてくる子が1歳になった時の愛着タイプが予想できると述べています。つまり、親の愛着タイプは子供の愛着に影響を及ぼし、また世代を受け継ぎ伝達されるということです。[1]
つまり自分の愛着タイプは自分の養育者であった親から伝達された可能性が高く、自分の愛着タイプが我が子の愛着タイプである可能性も高いということにもなります。子供が遺伝的なものだけではなく、愛着タイプまでも親に似るということに、筆者は親の子供へ与える影響の大さに驚愕しました。
養育とはただ子供を育てるだけではないのです。遺伝的ものはともあれ、親の養育の仕方が将来、我が子が歩むことになる道の質を変える一番の要素なのです。養育者の子供との関わり方の大切さ、また親自身の心理的な面もきちんと分析し、理解した上での養育が実は我が子の可能性を引き出すもっとも大事なキーポイントなのではないでしょうか?
次回は愛着形成の発達についてお話したいと思います。


About 吉田瑞稀

聖心女子大学(卒) 人間関係学専攻 UCL University of London大学院(卒) MSc in Psychoanalytic Developmental Psychology (修士:精神分析的な発達心理学専攻) 淑明女子大学院 児童心理治療専攻(博士課程終了) プレイセラピスト